徳島大学病院 結節性硬化症ボード(TSCボード)

Tuberous sclerosis complex board, Tokushima University Hospital

結節性硬化症はいろいろな臓器に、正常組織とは異なって過剰に増殖する過誤組織が形成され、様々な合併症を発症する病気です。症状、病態が多岐にわたり、単一の診療科だけでは十分な診療が困難であるため、関係の深い診療科のメンバーが協力して患者さんの診療に携わるためのチームです。徳島大学病院では、診療科の枠を超えた結節性硬化症診療チームを結成しました。

患者さん一人一人に向き合いながら最適な医療を提供することを目標としています。新生児から成人まで対応が可能です。結節性硬化症に伴う様々な症状に対して、関連する各診療科と連携および相談しながら総合的に診療します。

徳島大学病院結節性硬化症ボードのメンバー

  診療科 Member
てんかん・小児 小児科 森健治,森達夫,郷司彩
てんかん・成人 脳神経外科 多田恵曜,藤原敏孝
脳神経内科 山﨑博輝
上衣下巨細胞性星細胞腫 脳神経外科 髙木康志,多田恵曜, 藤原敏孝
結節性硬化症関連精神神経障害 精神科神経科 中瀧理仁
腎血管筋脂肪腫 泌尿器科 高橋正幸,楠原義人
肺リンパ脈管筋腫 呼吸器・膠原病内科 小山壱也
顔面血管線維腫・皮膚白斑 皮膚科 久保宜明,仁木真理子
網膜過誤腫 眼科 四宮加容
遺伝カウンセリング 臨床遺伝診療部 森野豊之,郷司彩
障害者歯科 小児歯科 中川弘,上田公子

 

結節硬化症とは?

結節性硬化症(TSC)は遺伝性の疾患で、全身に良性腫瘍が生じることによってさまざまな症状を呈します。主に皮膚(白斑、顔面血管線維腫)、眼(網膜過誤腫)、脳神経系(てんかん、発達障害)、脳内の良性腫瘍や結節(上衣下巨細胞性星細胞腫、上衣下結節)、心臓(横紋筋腫)、肺(リンパ脈管筋腫症)、腎臓(血管筋脂肪腫)などに症状が現れます。こられの症状が生じるか生じないかは個人差も大きく、出生時からみられる場合や年齢の経過とともに発症する病変が違うので、症状がなくとも定期的に総合的な診察を受けることが大切です。

TSC1とTSC2遺伝子が原因で細胞を増殖させるmTOR(エムトール)という物質が過剰に働くことでさまざまな臓器に過誤腫ができるといわれています。

「結節性硬化症のひろば」より引用

医療費助成

結節性硬化症は指定難病、小児慢性特定疾患の医療費助成対象となりました。症状の程度によっては助成対象にならないこともありますので、コーディネーターにご相談下さい。

てんかんについて

てんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮することで、発作がおきる病気です。

てんかん発作をきっかけにして結節性硬化症がみつかる患者さんが多く、小児の結節性硬化症患者さんの10人中6~9人にてんかんがみられると言われています。

てんかん発作について

早期の乳児期には、前屈してうなずくような仕草、体を折り曲げるようにお辞儀をしたり、両腕を振り上げたりする発作が数秒続きます。短時間間隔で何度も反復して繰り返します。このことをシリーズ形成と言います。このような発作を点頭てんかんと呼びます。気付かれにくく治療開始が遅れることもありますが、早期に治療することが必要です。

その他に年齢によっても発作のタイプが変わることがあります。

焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)

意識が混濁して、ボッーとして、一点を見つめるように動作が停止します。口をもぐもぐしたり、手をもぞもぞと動かしたりする発作

強直間代発作

突然意識を失い、全身が硬くなり(強直発作)、その後一定のリズムで手足がガクガクとけいれんを来す発作(間代発作)が続きます。口の中から泡状の唾液を吹き出すことがあります。その後は、多くは眠りに移りますが、もうろう状態に移ることもあります。

てんかんに対する治療

てんかんに対しては抗てんかん薬による薬物治療が中心になります。その他、結節性硬化症によるてんかんに対しては、ACTH療法、ビガバトリン、mTOR阻害薬であるエベロリムスによる薬物治療を行う事もあります。

その他、薬物治療抵抗性の場合にはケトン食療法や外科的治療を行うこともあります。

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)について

上衣下巨細胞性星細胞腫は脳にできる腫瘍です。サイズが小さい場合には症状がなく、問題にはならない場合もありますが、徐々に大きくなって、脳の他の部位を圧迫して症状が出現することもあるため、治療が必要になることがあります。

特に幼児期から思春期にかけては急速に大きくなることがあるために注意が必要で、定期的に検査(CTやMRI)を受ける必要があります。20歳以降にあらたに発生することはないといわれています。

特に腫瘍が増大し、モンロー孔を閉塞すると、脳脊髄液がブロックされ水頭症になる可能性があります。水頭症は命にかかわることがあるために速やかな治療が必要です。また、急速に大きくなったり、出血することもあるので注意が必要です。

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)に対する治療

病変が増大傾向にある場合や脳室の増大が認められる場合には、外科的に摘出を行うことが望ましいとされています。

また、結節性硬化症に対する治療薬としてmTOR阻害薬であるエベロリムスを使用することもあります。

腎臓の腫瘍:腎血管筋脂肪腫(AML)について

腎血管筋脂肪腫は、腎臓にできる良性の腫瘍です。緩やかに増大します。

腫瘍が大きくなると、出血の危険性があります。出血した場合は、入院で対応します。

また稀ですが、悪性(がん)が疑われることがあります。この場合は、手術などの治療を検討します。

腎AMLに対する治療

良性の腫瘍が大きくなれば、薬物治療(エベロリムス)で増大を抑制します。

その他の症状を含めて、薬物治療の開始時期を相談します。

リンパ脈管筋腫症(LAM)について

リンパ脈管筋腫症(LAM)は、LAM細胞と呼ばれる細胞が、肺、リンパ節、腎臓などで、比較的ゆっくりと増える病気で、多くは妊娠可能な年齢の女性に発症します。

LAMには、 結節性硬化症に伴って発生する場合と、単独で発生する場合の2種類があります。

この病気が進行すると、肺にのう胞と呼ばれる小さな穴が多数生じ、動いたときの息切れ、咳、痰、血痰、喘息様の喘鳴 などの症状が出現します。さらに病気が進行した場合は呼吸不全という状態になり 酸素療法が必要になることもあります。また、肺が破れて空気が漏れる気胸という状態になることがあり、その場合は胸痛や呼吸困難がみられます。よって、喫煙歴のない妊娠可能な女性であるにもかかわらず、動いたときの息切れを感じるようになった場合や、気胸を繰り返すような場合は、LAMの可能性を考えてCT検査などを受けることをお勧めします。

一般的にLAMはゆっくり進行し、肺病変の進行と共に肺機能が低下して、徐々に息切れを感じるようになります。ただし進行のスピードは患者さん毎に異なり、長期間にわたって安定した肺機能を保つ患者さんもいます。よって、定期的に肺機能検査とCT検査を行い、肺障害の進行の程度を把握することが重要です。

治療としては、シロリムス(ラパリムス®)を使うことで、LAM細胞の増殖を抑制し、肺機能の低下を抑えることが期待できます。結節性硬化症に合併してLAMを発症している場合は、エベロリムス(アフィニトール®)で治療を行うこともあります。

受診方法について

医療機関から「結節性硬化症診療ボード」宛てのご紹介が必要になります。

かかりつけの先生から予約センター(FAX 0120-335-979)にFAX予約申込票を送付ください。
希望される診療科名・担当医は以下の「問合せ先一覧」を参考にご記入をお願いいたします。

お問い合わせ先

診療に関する事は以下の「問合せ先一覧」を参考に各診療科へお問い合わせください。

問合せ先一覧

  診療科 連絡先 担当医
てんかん・小児 小児科 088-633-7132 森健治,森達夫,郷司彩
てんかん・成人 脳神経外科 088-633-7147 多田恵曜,藤原敏孝
脳神経内科 088-633-7118 山﨑博輝
上衣下巨細胞性星細胞腫 脳神経外科 088-633-7147 髙木康志,多田恵曜,藤原敏孝
結節性硬化症関連精神神経障害 精神科神経科 088-633-7128 中瀧理仁
腎血管筋脂肪腫 泌尿器科 088-633-7157 高橋正幸,楠原義人
肺リンパ脈管筋腫 呼吸器・膠原病内科 088-633-7118 小山壱也
顔面血管線維腫・皮膚白斑 皮膚科 088-633-7153 久保宜明,仁木真理子
網膜過誤腫 眼科 088-633-7161 四宮加容
遺伝カウンセリング 臨床遺伝診療部 088-633-9218 森野豊之,郷司彩
障害者歯科 小児歯科 088-633-7373 中川弘,上田公子